Рет қаралды 16,107
レトロな建物が並ぶ「博物館明治村」(愛知県犬山市)。ここでは百年以上前に製造された路面電車が現役で走っている。博物館エリアで動態保存されている貴重な車両を、番外編としてお届けしたい。
明治村正門から坂を下りると、えび茶で箱型の路面電車が静かにとまっていた。明治43年ごろ製造で昭和36年まで京都市電(現在は廃止)で活躍した車両だ。人と接触しても、すくい上げられるよう車両の前後に救助網が付いている。
ステップを上がり、オープンデッキの運転台を横に見て客室へ。席に着くと、「チンチン」と音がした。車掌が出発の信鈴を鳴らしたのだ。応えるように運転士が「カンカン」と警鐘。すぐにガタンと衝撃がきた。動き出した。整備されているとはいえ、百年前の骨董品。乗客からは驚嘆の声が上がった。
ただ、スピードは上がらない。大人の小走りほどか。乗務する伊東明さんは「今とは違い、メーターなど速さを制御する機能がありません。だから、人の感覚で運転するのです」と教えてくれた。
夕暮れとともに、人の姿が増え始めた。午後9時まで営業時間を延長する「宵の明治村」(毎年夏に開催、今年は終了)だ。路面電車は走らず、ライトを点灯した状態で展示される。
暖色の光で照らし出された電車の周りを浴衣姿の入場者たちが歩く。その光景を眺め、下駄の音を聞いていると、100年前に引き込まれたような感覚に陥った。