ティラミスは今でこそ市民権を得た名前だけど、Tira mi sù は直訳すると「私を(天へ)上げて」(≒絶頂させて、イかせて)という意味のスラング。甘くて口当たりがいい反面アルコールの効いているこの食べ物はかつて精力剤として扱われ、閨の誘いでもあったのである意味「夜のお菓子」の代名詞でもあった。元は砂糖が活力剤だったルネサンス後期に高カロリーなロンバルディアのクリーム(当時のマスカルポーネはチーズではなかった)と合わせて精力剤としたのが原型。19世紀に入って英国から始まったブームでイタリア各地にマルサラ酒が広まるとこれが香り付けに使われ現在のクリーム部分が完成する。60年代にトリノの菓子職人が更に全体を引き締める苦味と覚醒効果のある(カフェインに由来する)エスプレッソコーヒーを組み合わせて現在の形へ再構築したとされる。