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敵軍襲來
遠く沖べを見渡せば
浮べる舟のそのかずは
幾千萬ともしら波の
此方をさして寄せて來ぬ」
陸はいかにとながむれば
味方は早くも破られて
須磨と明石の浦づたひ
敵の旗のみうちなびく
吹く松風かしら波か
よせくるなみか松風か
響き響きて聞ゆなり
つゞみのおとに鬨のこゑ」
湊川の奮戰
いかに正季われわれの
命すつべき時は來ぬ
死す時死なでながらへば
死するに勝る恥あらむ」
太刀のをれなむそれまでは
敵のことごとかたへより
斬りてすてなむ屠りてむ
進め進めといひいひて
かけいるさまの勇ましや」
右より敵のよせくるは
左のかたへと薙ぎ拂ひ
左の方よりよせくるは
右の方へとなぎ拂ふ
前よりよするその敵も
後よりするその敵も
見ては遁さじのがさじと
奮ひたゝかふ右ひだり
とびくる矢數は雨あられ」
君の御ためと昨日今日
數多の敵に當りしが
時いたらぬをいかにせむ
心ばかりははやれども
刄はをれぬ矢はつきぬ
馬もたふれぬつはものも」
かしこの家にたどりゆき
共にはらをばきりなむと
刀を杖にたちあがる
身には數多のいたやぐし」
戸をおしあけて内に入り
共によろひの紐とけば
緋をどしならぬくれなゐの
血しほしたゝる小手の上」
こゝろ殘りはあらずやと
兄のことばにおとうとは
これみなかねての覺悟なり
何かなげかむ今さらに」
さはいへくやしねがはくは
七度この世に生れ來て
にくき敵をばほろぼさむ
さなりさなりとうなづきて
水泡ときえしはらからの
こゝろも淸きみなと川」