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その、ありがとう、を受け取るべき人間は私じゃないんだ。
君は日常に転がる感謝を拾うのが得意な人だ。
落としたシャープペンを拾ってくれた子とか、クラスの掃除のごみ捨てに行ってくれた子とか、どんなに些細なことにも気づいて
「お、ありがとうな!」
と声を掛ける君は誰よりも真っ直ぐな瞳を持っていた。
私も沢山、君から感謝を受け取ってきたけど、実は心当たりのないことも多くてさ。
「この前、校庭の花壇に水遣りしてくれてただろ、ありがとう!」
「おまえさっき図書室で本の整理してただろ、ありがとな!」
身に覚えのない時、私は曖昧に笑って誤魔化すことしか出来なかった。
なんでこういうことが起こるかは分かってたんだ。私には妹がいるからね、双子の。
妹は体が弱くて学校もたまにしか来れないの。来た時は保健室とか図書室とかにいるから、君は多分その時に妹を見たんだろうな。
妹のことを知ってる生徒は少ないし、私達は一卵性でとっても似てるから、間違えちゃうのも無理はない。
けどね、君からありがとうって言われるのが嬉しくて、私いつまでも言い出せなかったの。ごめんね。
だから、君から放課後体育館裏に呼び出されて
「君の優しさを見つける度に、どんどん好きになりました。付き合ってください。」
なんて告白されちゃった時も、(ああ、またか) なんて思ったけど。
私は、最低な選択をした。私が貰うはずのないありがとうを、好きの気持ちを、私の妹が受け取るべきそれを、私は、私は欲しくなってしまって。
ごめんね、今だけは、ゆるして。
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