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夏の終わり、渓流の上流部に、体長二十センチほどの魚が集まり出す。サツキマスの陸封型、アマゴである。
日本語名に「マス」と付く魚は、学術的には全てサケの仲間であり、サケと同じように川で産卵し、孵化した幼魚は海に下る習性を持つ。
但し、全ての幼魚が海に降りるわけではなく、川で一生を過ごす個体もいる。これが陸封型で、姿は大きく異なるが、サツキマスとアマゴは同じ種なのだ。
アマゴによく似た魚として、サクラマスの陸封型であるヤマメが知られているが、アマゴには背中から側面にかけて朱色の斑点があるため、容易に見分けることができる。
生息域にも違いがあり、天然のアマゴは、神奈川県以西の太平洋、もしくは瀬戸内海に注ぐ川の上流にのみ棲息する。サツキマスとサクラマス、そして琵琶湖の固有種であるビワマスは、降海型のニジマスを共通の祖先とする近縁種なのだが、それぞれの生息環境に併せて独自の進化を遂げたのだ。
特に、アマゴ、及びサツキマスの生態は、他の種には見られない特徴がある。
サケの仲間は冷たい水を好むが、アマゴも例外では無く、水温が上昇する夏の間は深い淵に潜んでいる。
九月頃、水温が十八度を下回りだすと徐々に活動的になり、十五度を下回る頃には瀬にも姿を見せるようになる。このとき、上手く餌を摂ることができず、飢餓状態に陥った個体は、体に変化が生じ始める。
体の色が薄くなり、全体に銀色を示すようになるのだ。
これはスモルト化と呼ばれるサケ類に特徴的な変化で海水への適応能力を得る過程で発現するのだが、ほとんどのサケ類は早春にスモルト化し、雪解け水による増水を利用して海に降りる。
アマゴが秋にスモルト化するのは、太平洋岸の海面の温度が十五度以下になる時期を選んでいるからと考えられる。しかし、遠く離れた海面の温度を何で感知するのか確実なことは判っていない。
アマゴがスモルト化する頃、海から故郷への遡上を始めたサツキマスも、上流域に到達する。
河口部から再遡上する際に、免疫力が低下するため、小さな傷にも水カビなどが広がり、体がボロボロの個体も目に付く。
僅か数ヶ月、海や河口域でイワシなどを食べたことで大きく成長しただけでなく、オスの鼻先は曲がり、まるでサケのような顔つきに変わる。
とても同じ魚とは思えないが、アマゴもサツキマスも昨年の秋、この場所で産まれた、きょうだいなのである。
この頃、河底をよく観察すると、所々に白い礫が目立つ場所があることに気付く。これはメスのサツキマスが尾びれで河底の礫を巻き上げて作った、産卵床である。
メスが産卵床を作り上げ、オスとのペアが成立すると、いよいよ繁殖行動が始まる。オスは産卵直後の卵を食べようと群がるアマゴを追い払い、メスとのタイミングを合わせて放精する。
アマゴ同士の繁殖行動は、サツキマスより半月ほど遅れて始まる。
サツキマスとアマゴは同じ種であり、サツキマスとアマゴでも繁殖は可能である。しかし、なぜ繁殖時期を違えるのか、この魚の生活史には、まだまだ多くの謎が残されている。
日本の河川は距離の割りに高低差が大きく、流れが極めて早い。このため、川の水には栄養分が少なく、陸封魚が暮らすには厳しい環境とも言える。
こういった条件の中で、なぜアマゴは秋にスモルト化するのか、そして海に下ったサツキマスはなぜ半年で故郷に帰るのか、その詳しいメカニズムはまだ完全には解き明かされていない。
しかしそれらは、何らかの形で環境を計り、繁殖に有利だからこそ選ばれた生活史であることに間違いは無い
人間にはこれほどまでに環境を計るセンサは無い。
しかし人類には分析力という種を越えた力がある。
その分析力で地球の姿を計ること、
それこそが人類に与えられた使命といえるだろう。
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堀場製作所