[TCM] 東京音楽大学 第11回 声楽教員によるコンサート

【東京音楽大学 第11回 声楽教員によるコンサート】
2020年10月10日（土）17：00開演
東京音楽大学100周年記念ホール（池袋キャンパス）にて収録
Tokyo College of Music
The 11th Vocal Music Faculty Artist Series
TCM 100th Anniversary Hall, Ikebukuro Campus
10 October 2020
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《出演・曲目》
1. 中丸 知美（ソプラノ）
00:00 山田 耕筰／からたちの花
　　　K.Yamada / Karatachi no hana
03:14 武満 徹／小さな空
　　　T.Takemitsu / Chiisana sora
07:13 ラモー／歌劇『イポリートとアリシー』より 「恋するナイチンゲールよ」
　　　J-P.Rameau / Rossignols amoureux : from “Hippolyte et Aricie”
2. 北嶋 信也（テノール）
13:03 ベートーヴェン／くちづけ 作品128
　　　L.v.Beethoven / Der Kuss, Op.128
15:30 ベートーヴェン／6つの歌 作品75より 「新しい愛、新しい人生」
　　　L.v.Beethoven / 6 Gesänge, Op.75. Neue Liebe, neues Leben
18:46 モーツァルト／歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より 「私の恋人を慰めて」
　　　W.A.Mozart / Il mio tesoro intanto : from “Don Giovanni”
3. 藪内 俊弥（バリトン）
23:03 ラヴェル／ドゥルシネア姫に想いを寄せるドン・キホーテ
　　　M.Ravel / Don Quichotte à Dulcinée
30:40 コルンゴルト／歌劇『死の都』より 「私の憧れ、私の幻は甦る」
　　　E.W.Korngold / Mein Sehnen, mein Wähnen : from “Die tote Stadt”
4. 岡 昭宏（バリトン）
35:25トスティ／哀れなお母さん
　　　F.P.Tosti / Povera mamma
41:52 ジョルダーノ／歌劇『アンドレア・シェニエ』より 「祖国の敵?!」
　　　U.Giordano / Nemico della patria : from “Andrea Chénier”
5. 木下 美穂子（ソプラノ）
47:26 プッチーニ／歌劇『トスカ』より 「歌に生き、愛に生き」
　　　G.Puccini / Vissi d’arte, vissi d’amore : from “Tosca”
51:54 プッチーニ／歌劇『蝶々夫人』より 「ある晴れた日に」
　　　G.Puccini / Un bel dì, vedremo : from “Madama Butterfly”
ピアノ　谷池 重紬子　湯浅 加奈子
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《演奏者によるプログラムノート》
♦山田耕筰／からたちの花
北原白秋作詞。山田耕筰は幼い頃養子に出され、工場で働きながら夜学で学んだ。辛い時にはからたちの垣根まで逃げ出して泣いた、と後に自伝に残している。その思い出を北原白秋が詩にした。
♦武満徹／小さな空
武満徹作詞。今年は武満徹生誕90年。この曲は1962年、TBSラジオ連続ラジオ・ドラマ『ガン・キング』(漫画を原作とする西部劇)の主題歌として作曲された。当時、主題歌を小学生が口ずさむのを聞き、武満徹は大変喜んだ。
♦ラモー／歌劇『イポリートとアリシー』より　「恋するナイチンゲールよ」
音楽理論家として高名だったラモーが50歳で初めて発表したオペラである。初演1733年パリ王室音楽アカデミー。原作はラシーヌの「フェードル」他、ギリシャ神話を題材とし、ペルグランの台本に基づく、プロローグと5幕からなる叙情悲劇。このアリアは鳥のさえずりを描写する軽やかなアリアで、第5幕ニンフ(精霊)が歌う。
〈歌詞大意〉
恋するナイチンゲールよ、私たちの声に答えておくれ
優しくさえずっておくれ
お前たちの歌は、森の神への優しい讃歌
（解説　中丸 知美）
♦ベートーヴェン／くちづけ 作品128
生誕250周年となるベートーヴェンの歌曲を取り上げました。詩人C・ヴァイセによるユーモアな作風で、少年が少女に首尾よくキスをしたことを誇らしげに語る様子がベートーヴェンの快活な音楽と共に生き生きと表現されています。「僕はクローエと二人きりで、彼女にキスをしようとしたんだ。だけど彼女は叫ぶから無理よって言ってさ。でも、思い切ってキスしてやったんだ。彼女が叫んだかって？もちろん、ずっとずーっと後になってからね。」
♦ベートーヴェン／6つの歌 作品75より　「新しい愛、新しい人生」
若き日の詩人W・ゲーテが実らない恋愛をしたときに生まれた詩といわれています。恋をして相手に翻弄され、まったく制御出来ないそんな状況をベートーヴェンは８分の６拍子、ハ長調、テンポにはLebhaft（生き生きと）と表記し、心臓の鼓動が聞こえてくるようなドキドキ感、どうしようもない男心を巧みに表現しています。「僕の心よ、一体どうしたんだ？なんでそんなに苦しんでいるんだ？なんて新しい人生なんだ！僕にはもう自分が分からない。彼女が僕の心をつかんで離さない。愛よ、僕を解放してくれ！」
♦モーツァルト／歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より　「私の恋人を慰めて」
ドン・ジョヴァンニはスペインの伝説の放蕩者ドン・ファン物語の主人公です。この曲は、第２幕第10景で、ドン・オッターヴィオによって歌われるアリアで、彼の恋人ドンナ・アンナの父を殺したのはドン・ジョヴァンニだと確信し、裁判所へ訴えに行く直前に歌われます。「私が行っている間、みなで私の恋人を慰めてください」と彼女への想いとドン・ジョヴァンニへの復讐の決意を歌います。ドンナ・アンナを慰めてくださいと歌う部分では、音型が優しく表現されていますが、そののち復讐の決意が沸き上がって伴奏も音楽も一変し激しいコロラトゥーラで表現されているのが印象的です。
（解説　北嶋 信也）
♦ラヴェル／ドゥルシネア姫に想いを寄せるドン・キホーテ
ポール・モランの詩による3曲の連作歌曲。映画「ドン・キホーテ」の劇中歌として依頼を受け作曲していたが、他の作曲家にも同じように依頼されており、訴訟問題にまで発展した。ラヴェルの曲は映画では使用されず、歌曲として出版された。この後に病気になり、ラヴェルの最後の作品となった。
♦コルンゴルト／歌劇『死の都』より　「私の憧れ、私の幻は甦る」
主人公パウルの友人フリッツ役が兼ねるピエロ役が歌う、ロマン溢れる甘美な曲。踊り子マリエッタに「愛の歌」を歌ってと言われ、それに応えて甘く、切なく歌う曲。
(解説　藪内 俊弥)
♦トスティ／哀れなお母さん
トスティ(Francesco Paolo Tosti, 1846-1916)の1882年、36歳の時の作品。自身の赤ん坊を失った母親の痛切な思いを綴った曲。同時期の作品にAprile(4月)、Ideale(理想)がある。
♦ジョルダーノ／歌劇『アンドレア・シェニエ』より　「祖国の敵?!」
18世紀、革命前後のフランスを舞台に、実在の詩人アンドレ・シェニエの半生を描いた作品。ジェラールはコワニー家の召使いだった。彼は衰えた父が､そして貧しい人々が軽んじられるのを怒り､召使いの立場を捨てて館から立ち去り革命に身を投じる。革命政府の高官になったジェラールは、コワニー・マッダレーナへの横恋慕のために、恋敵であるシェニエを偽りの告訴で死刑へと追い込もうとする。しかし彼はそうした自分自身に対し、罪の意識にさいなまされ葛藤する。
(解説　岡 昭宏)
♦プッチーニ／歌劇『トスカ』より 「歌に生き、愛に生き」
このアリアは、イタリアを代表するオペラ作曲家プッチーニのオペラ『トスカ』の歌姫トスカによって歌われます。第２幕、捕らえられた恋人の解放と引き換えに、警視総督から関係を迫られるトスカが、
―私は歌に生き、愛に生き、他人を害することなく、困ったひとがいたら、そっと手を差し伸べてきました…、なぜ神はこのようなむごい運命をお与えになるのですか…―と悲しみと絶望の中で歌います。
♦プッチーニ／歌劇『蝶々夫人』より　「ある晴れた日に」
トスカ同様プッチーニによって作曲された、オペラ『蝶々夫人』の中で歌われるアリアです。舞台は明治時代の日本の長崎。第２幕、３年帰らない夫のピンカートンを思い、港のみえる丘の上で彼の帰りを信じて女中のスズキに向かって歌います。夫の帰りを心から信じて待つ蝶々さんの純粋さ、悲しさ、愛情の深さと、この曲の旋律の美しさが重なり、ソプラノのアリアの中でも最も有名な曲となっています。
（解説　木下 美穂子）
主催／東京音楽大学
後援／豊島区