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帆奈さんは本質的な意味において、新しい時代の表現者である。
人と自然、生命と非生命といった、本来は存在しない境界線の背後に広がる「世界の実像」を浮き彫りにする表現、とでもいうべきだろうか。 例えば彼女の代表作の一つは、自身が科学的な研究対象にもする「粘菌」を題材にしたものだ。
真性粘菌に色素を与え、本来僕らが視覚的に感知することのない、菌やバクテリアの生態をポップな視覚表現として顕在化させることで、見る者の生命に対する認識のあり方を揺さぶり、拡張する。機械的なシステムに依存し、生命の不確実性に対する洞察力を著しく失った人類が、未知のコロナウィルスによって混乱を深める中、静かに、鮮やかに世界の裏側の情景を描き出す。 そんな帆奈さんの雲ノ平での滞在制作も、実に独特のものであった。 高山帯の原生林での粘菌探し&培養にはじまり、彼女自身が草原で半日も静止して直立し、タイムラプス撮影で「変化しない自分の姿」と「風景の移ろい」とのコントラストを描いた「人間≒植物」動画。草花の色素で紙に絵を描き、それを池塘に沈めて色の変化(流出)を撮影した映像作品。木道
の破片や金具など、本来自然界には存在しない素材を拾い集めて造形した廃材オブジェetc... 哲学的考察とユーモア、デザイン性、アートとサイエンス、能動と受動、さまざまな閃きが絡み合って、いつしか現実に対するオルタネイティブ(異世界的)な視点を醸成する。そして、彼女自身がその曖昧に乱反射する霧めいた視界の中を、軽やかに散歩している、そんな表現者である。 これからも彼女は、僕たちが知らない世界へと通じる、目には見えないドアを開き続けるのだろう。