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登場人物
・娘(4歳/18歳)・・・小学校入学前/東京の大学へ入学が決まり名古屋を離れることに(CV:桑木栄美里)
・父(49歳/62歳)・・・建築関係の会社を経営/いつでも末娘が愛しくてたまらない(CV:日比野正裕)【ストーリー】
娘: 「いままで、本当にありがとう・・・」
娘: インクの染みとシールを剥がした痕が残る学習デスク。
私は木製の白い表面を撫でながら、13年前のあの日を思い出していた。
(SE〜インテリアショップの雑踏)
娘: 「わあ!学習デスクがいっぱい・・・」
父: 「あんまり目移りしてると、決められなくなるよ」
娘: 「まるでデスクの海みたい」
娘: 初めて父と母に連れてきてもらったインテリアショップ。
波間をただよう舟のように、学習デスクの海の中を
父と母と、手をつないで見てまわる。
私の足が止まったのは、2台並んでディスプレイされたシンプルな木製のデスク。
真っ白に磨かれた天板がキラキラと輝いて見えた。
左側のデスクはエッジに茜色のラインが入り、
右側のデスクには藍色のラインが煌めいている。
どちらかを決めるのは、4歳の私にとって簡単ではなかった。
父: 「決められないのかい?」
娘: 「うーん・・・」
父: 「わかった」
娘: 小さな頭で悩む私の横で、父は店員さんを呼ぶ。
父: 「この2台、ください」
娘: 「え?」
娘: 父は訳あり顔で笑うと、私の肩越しに兄を指差した。
学習デスクコーナーのすみっこでゲームをしているのは、私の1つ上の兄。
そうだった、今日はこの春小学校に入学する兄の学習デスクを見に来たんだ。
兄に聞こえないように、少し声を落として父が、
父: 「君(お前)が好きな方を選ぶんだよ」
娘: と言って、優しく微笑む。
娘: 「ありがとう!」
父: 「大切に使おうね」
娘: こうして、小学校へ入学するよりも前に、
学習デスクは私の元へやってきた。
入学するまでの1年以上、
私は、宿題もないのに、毎日学習デスクに座って本を開いた。
私だけの特別な場所。
そこは私にとってかけがえのない空間だった。
(SE〜扉を開ける音〜デスクにかばんを置く音)
娘: 「ただいま」
娘: 小学校から中学、そして高校へ。
いつだって、家に帰ると自分の部屋に直行して、まず学習デスクに声をかける。
疲れていても、学習デスクが優しくつつんでくれる気がした。
私の学生生活は、放課後、夕方から放送部、
そのあとバレエスタジオで夜までバレエのレッスン・・
家に帰ると、学校の宿題、テスト勉強、受験勉強・・・。
時には机の上で寝落ちてしまい、知らず知らずインクの染みで
汚してしまうことも。
(SE〜扉を開ける音〜デスクに小皿を置く音)
娘: 「あ・・・」
父: 「(これ )母さんから」
娘: 学習デスクの上で食べる夜食がホントに美味しくて・・・
美味しくて涙が出るなんてあるんだ、って知った。
(SE〜扉を開ける音)
父: 「風邪ひくぞ・・・」
娘: 寝落ちした私の肩に毛布をかけてくれた父。
優しい声は頭の中の片隅で聞いていた・・・
嬉しい時、悲しい時、楽しい時、辛い時。
学習デスクは私の表情を全部知っていて、どんな時も私のそばで見守ってくれた。
私の学習デスクは、私の家族の一員だった。
そして・・・
(SE〜大学キャンパスの雑踏)
父: 「おめでとう」
娘: 第一志望の大学に合格し、上京することが決まったとき、
一人暮らしの小さな部屋に、学習デスクは連れていけなかった。
家を出る日、私はもう一度学習デスクに座った。
最後にその暖かい感触を確かめるように。
インテリアショップで初めて出会ったときのピカピカのイメージは消え、
使い込んだデスクの表面には、インクの染みとシールを剥がした痕。
それもいまは、ぼんやりかすんでよく見えない。
あの日、学習デスクの海の中でひたすら輝いていた、私のデスク。
あの日と同じように、もう一度、そっと触れる。
初めて出会ったあの瞬間のときめきを、一筋の寂しさに変えて。
娘: 「いままで、本当にありがとう・・・私の、大切な家族」