地歌「名所土産」 (Jiuta : Meisyo - Miyage) 太田里子

「名所土産」
水無月の 初旅衣 着てみれば
ここは住吉　青丹（あお）によし
奈良坂　越えて　夕暮の
空も静かに　寂滅為楽（じゃくめついらく）と　告げわたる
これぞ名におふ　大仏の
鐘ごと（※鐘の音）洩れて　高円（たかまど）の
他所に浮名や　立田山（竜田川）
三輪の山路に（※も）　裳裾（もすそ）の糸の
いとど故郷（ふるさと）　春日野の
社にしばし　この手をば
合せ鏡の　底清く
あれあれ南に　雲の峰
暑さ凌ぎの　三笠山
月の七瀬の　飛鳥川
変るや夢の　数添へて
名所々々の　都の辰巳
宇治の川面　眺むれば
[合い手]
[中唄]
遠（おち）に白きは　岩越す波か
晒せる布か　雪に晒せる　布にてあり候（そろ）
[合い手]
賤（しづ）の女（め）が　脛（はぎ）もあらはに　よそね縞（じま）
馴れし手業（てわざ）に　玉ぞ散る
波のうねうね　白玉ぞ散る
[手事]
[後唄]
あら面白の景色やな　あら面白の景色やな
われも家路に立ち帰り　土産（つと）に語らん花の家
土産（づと）に語らん
地歌筝曲。作曲者は不詳で、讃州某とも玉塚検校ともいわれている。大阪系の地歌で、大阪十二曲の一つともされ、「松竹梅」「根曳の松（ネビキノマツ）」とともに、三役物という三味線手事の最高の曲といわれている。
住吉から初めて旅に立ち、奈良から宇治に巡って名所を観光し、その名所のことを土産話にしようという、旅人の心情を描いた歌。

[@海道征亮]

名所土産の唄三弦菊茂琴昇、箏菊藤松雨を曾て菊茂先生に録音聴かせていただき写させて頂いた。金沢に招かれた際の演奏とお聞きした。先生の奥さまが、街で奥さまに手を引かれて歩いている先生の姿を見た街ゆく姿を見て「あっ！検校さんがあるいている」と嘆声を上げた、さすが北都金沢やと奥さんが誇らしげに話していたことを懐かしく思い出す。箏の手付は菊原琴治で三弦を際立たせるように控えめだが、全盛期の生き生きと躍動感のある先生の三弦と雅味のある歌の演奏技量、味は東京辺りの、有名な先代富山師や、九州派の及ぶところではない。大阪でこの曲が残月より重んじられた所以がよく判った。

[@shamisentoshitsuru2370]

こちらの演奏は、三絃：太田里子師、箏：矢木敬二師、尺八：二代青木鈴慕師かと思われます。

[@jiuta-fanfan3684]

誠に有難うございます。他の方にも貴重な情報と思いますので、大変助かります。今後とも何卒宜しくお願いいたします。