2:00 1600年頃の魔女裁判も犠牲者の3/4は身寄りのない老婆でした。体力が無いので抵抗され難いし、その人を守る親族もいないし、世論や国家も老婆を守る気がろくに無いどころか権威者はむしろ老婆のようなスケープゴートがいる事が都合良かったりもしました。ホームレスも全く同じ立場です。そしてそれを倫理的にどうこう言っても不毛だし話が先に進みません。どんな生物でも各個体が身を守るには目立たない事、多数派でいる事がコツです。森の木も自分一本だけ日光を独占しようと背伸びしてたら台風や雷が来た時に真っ先に折られたり焼けてしまいます。謙虚に低くしすぎてても光が不十分で絶滅させられます。社会弱者が生存を図るには弱者同士で団結するしかないのに、老人やホームレスにはその力すら無い事は福祉施設や自分のホームレス経験から肌で感じさせられました。弱者は皆で強者に立ち向かうよりも弱者同士でケンカしたがってしまうんです。じゃあ金持ちほどケンカせずなのかというとそれも違います。むしろ金持ちは生存が安泰なので繁殖にばかり意識を置けます。デヴィッドグレーバーはブルシットジョブの中で高学歴者ほど会社内で業績競争に勤しむと言っています。 9:40 一億総中流というか貧富格差が少なかったのは世界的な傾向です。良い図がありませんがXのFrançois Valentinの2023年11月8日のツイ 「Modern America is shaped by rugged individualism and inequalities But this chart shows that it hasn’t always been the case: in the mid 20th the US was a strong communitarian society」 でも政治学者ロバートパットナムの作った図、社会が個人主義か共同体主義かを簡単に示しています。トマピケティのworld inequality databaseでも日本は一次大戦以後の満足な統計資料がある範囲では最も貧富格差が少なかったのは終戦直後であり、欧米も1970年頃がそうで、1968年フランス5月革命はその象徴と言えます。しかしその世界的左傾化への反動か80年代に新自由主義が起き、2010年代には更にその右傾化への反動でポビュリズムが起きたにも関わらず、トランプは一期目にはアメリカ社会の経済格差を何も縮小しませんでした。次の政権も同じだったのと今年から更にもう4年追加されて計12年アメリカ社会の経済格差は何も変わらないか開き続ける事になります。トゥキディデスか誰か忘れたけどポピュリズムは衆愚政治であり独裁者を生み出す事にしかならないと言ってたけど、国民が安易にポピュリストを選び続けてしまうと国民の不満は尤も安易な方法である対外戦争によって解消されかねません。ウマイヤ朝がビザンツを凌ぐように勢い良く勢力拡大したのも純粋に国力があったからとか社会制度が優れていたからと言うより、マワーリーという被支配層の不満のはけ口を外に向けたからでした。 9:52 世界平均よりは優秀であろう事には同意ですが、検挙率が低いと言われるし、2000年には交通違反金の目標額が100億円と言われていたのが今は800億円と言われるくらいのノルマ制になっていて、事実上賄賂額上昇と見做せます。 中高生の学力もそうですが国民のレベルの高さは権威度と自由度のバランスが理想的な状態である事にあるのではないかと思っています。権威主義が行き過ぎると親は子を自己都合で道具扱いするので子の才能や気力という人的リソースが浪費される事になり国家衰退するし、権威度が低すぎても国民には主体性があるものの自己主張に勤しみすぎて集団としての調和が保たれません。米と中露は理由は別々ながらも国民間実質経済格差は実質同じとも言われます(マイケルサンデルら学者の意見の俺的中和)。 11:30 これも以前書いたかもしれませんが岡檀「生き心地の良い町」では近所付き合いが盛んな地域では自殺率が低いという恩恵もあるのに対しニコラライハニ「協力の生命全史」では血縁社会度≒地域共同体社会度が高いと排外的になり相対的に内集団間での賄賂汚職が蔓延ったり、電子マネーやクレジットカードなどの外集団が設けたインフラに必要以上の不信感を持って時代遅れになってしまうリスクを指摘しています。俺の母親が二日に一日は下痢してるにも関わらず整腸剤を体に悪い劇薬かのように見做して毛嫌いし続けて自ら早死に向かっているのも母が団塊で田舎農家出身だからです。地域住人間の強力にも排外閉鎖傾向というトレードオフ要素があるんです。他国で原住民部落巡りしていた時に田舎部落の人は一目見て外国人だと分かる俺を見ては露骨に注視したり、そこで放し飼いにされてる犬たちも家というより部落の番犬として激しく吠え続けるか、とても人懐こくて俺に幸福感をもたらせてくれたかのどちらかでした。後者は田舎の人は他人との心の距離が短くなる事の反映です。犬にとっても日常生活で接する相手が少ないと一人当たりとの接触時間が長くなるので深い付き合いしか出来なくなります。 俺が人口2千人の過疎離島に住んでいた時は家に鍵をかける事は年に一度もありませんでした。どうせ貧乏なので盗られる物も無いし、島民みんな顔見知りなので俺の家に入った現場を誰かが見ていたら逃れようが無いし、貧富格差も少ないので島民は相対的剥奪感も持ち難い事がありました。4年間での犯罪(窃盗)は一件だけ、それも島民みんながどうせあいつだろみたいに分かり切っている問題児による犯行でした。じゃあそういう社会が天国かというとそうとも限らず、まず俺みたいにマニアックな嗜好と能力を持っている者はその社会に居場所がありません。普通の主婦が作れるような料理を一通り作れれば良いと言う需要しか無く、俺はインドカレーやフムスならプロ級だぞと言ってもそれで生活できるほどの需要はありません。そして排外閉鎖的にもなってしまうので元々貧しいのに年月を経るにつれて増々都市部との経済格差が開き、子供たちは親や祖父母世代の独善性のツケを一生かけて払わされる事になります。 13:55 囚人を一人食わせるのに年間400万円くらいかかっているという話があるけど、一方で受刑者の手工芸品などの売り上げは刑務所や刑務官に没収させられすぎているという声もあります。運転する者が交通課を食わせるための羊なら、受刑者は刑務所職員を食わせるための羊、或いは賦役させられる奴隷とも言えます。また社会心理学話として確かアメリカで警官を増やしたら犯罪が増えたという例もあります。それは警官たちが検挙ノルマを競ったのもあるだろうし、地域住人が警官を扶養するため社会リソースを奪われ貧困化したせいでもあります。何でも表裏両面見ましょうよって話です。人の命や人権や犯罪の軽重は社会経済状況によって変動し、国が貧しければ些細な犯罪でも長期間賦役させられる事になります。北欧が犯罪者に優しいのも国が豊かである事と平等思想が強い事があります。