管矢、高速の秘密兵器

管矢(くだや)は、短い矢を通常の矢と同じ引尺で引いて放つ射術です。軽く空気抵抗も少ないため矢は非常な高速で飛びます。矢の重量が半分とすると計算上速度は1.4倍。 空気抵抗も考えると、更に速くなっているはずです。 管矢と普通の矢の実測比較映像　 • 速度は約1.5倍、管矢の速度計測 Speed... 　この実験では速度は1.5倍だったという結果が出ています。
韓国の方から聞いた話によると、実戦では、矢が小さく速いため飛んで来るのが見えず、狙われると非常に恐ろしかったようです。
同種の物はトルコからペルシャを始め中国や朝鮮など、大陸の各国で使われています。
管矢は、普通の矢では届かない遠距離(射程は約２倍とも言われてます)の目標を狙ったり、普通の矢では射抜けない堅固な甲冑への攻撃に使われたようです。
朝鮮の李朝では、弓射騎兵がこの管矢の樋(Tong-Ah)と矢(片箭)15筋ずつ標準装備として持っていたようですが、秘密兵器として無闇にその存在を明かさないよう命じられていたとも言われます。
日本には秀吉の朝鮮の役の際に伝わったと思われ、日本の武士が捕獲して使ったと思われる記録が朝鮮側に残されています。しかし、当時、すでに鉄炮が普及していたためか、あまり注目もされず忘れられてしまったようです。その後、朝鮮通信使が再びこの射術を披露し日本側を感心させたと言う記録があります。
日本では日置流伝書の別伝にこの管矢の記述があると言います。その他の弓術書や口伝などでも伝わっているようですが、いずれも断片的な内容で詳細は不明です。樋から矢が逸れると、かなり危険なので今では誰も推奨せず、従って普及もしていないのだと思います。
●下に映像で使った管矢のデータを記しますが、管矢は非常に危険です。下のデータ通りに作られた管矢の試用で万一重大な事故が起こっても、当方では一切責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください●
今回製作した管矢の樋は、全長950mm、外径21mm、内径12mmの白竹(竹は自然物なので外径寸法は目安です。重要なのは内径が12mmであると言うこと)を使い、樋の深さは10mmから11mmで、切れ目の幅は筈が外に出る10mm前後です。
短い矢の直進性を高めようと思い(勝手な改良で)樋の先端を筒状に残していますが、果してこれが機能しているかどうかは不明です。筒を通る時の抵抗で若干矢勢が衰えているような感触があります。日本や韓国、中国で見られる一般的な管矢の樋は先端までずっと上が開いた樋状です。
矢は全長約320mm、矢羽は長さ60mm、高さは6mmのターキーです。矢先に着けているのはアーチェリー用のホイッスル。これを装着するため竹の篦に7mm、8mm、9mm径のアルミパイプをスタックしてはめ、そこにアーチェリー用の矢尻インサート6mm径を接着しています。「止戈枢要」には管矢の矢が四寸と記されているので、実際には今回のよりずっと短い矢が使われていたようです。矢は短ければ短いほど高速で飛びますが、樋の中で不安定になって事故の危険性が増します。
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