【おやすみ前に聴く朗読】文学の旅『夢十夜』/夏目漱石

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枡太の朗読空間(ますた)

枡太の朗読空間(ますた)

Күн бұрын

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@tatsumioga8271
@tatsumioga8271 Жыл бұрын
朗読を聴いて漱石が令和に生きている理由がほぼ判った。
@readingmasuta
@readingmasuta Жыл бұрын
令和の文學界には夢十夜や草枕はとうてい埋まっていないものだと悟った…
@tatsumioga8271
@tatsumioga8271 Жыл бұрын
@@readingmasutaさんの返しが素晴らしいです。
@springmountain6544
@springmountain6544 2 жыл бұрын
幻想の世界を見事に表現しているのは、見事な朗読は勿論のことですが、話の間の効果音が実にいい仕事をしています〜これ以上の演出はない!素晴らしい👏
@readingmasuta
@readingmasuta 2 жыл бұрын
そこを褒められたのが初めてなので、本当に嬉しいです!
@satoshi-oq4pe
@satoshi-oq4pe 3 жыл бұрын
文学が好きで、いろいろと朗読を探していた所、桝田さんのこちらのチャンネルにきました。下のコメントを拝見した所、プロではなく趣味でやられているということでとても驚きです。声も素晴らしいですが、何よりも文学世界に引き込まれます。このような素晴らしい朗読に出会えたことに感謝しかありません。
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
文学作品の世界を朗読でお伝えできているのであれば、これ以上嬉しいことはありません。今後いろんな文学作品にチャレンジする勇気を頂けます。本当にありがとうございます。
@runa555luna
@runa555luna 2 жыл бұрын
@@readingmasuta 芥川龍之介や谷崎潤一郎の秘密等お聞きしたいです。
@マッサマン-q9h
@マッサマン-q9h 2 жыл бұрын
桝太さんな
@user-tz3nx3sc4v
@user-tz3nx3sc4v Жыл бұрын
初めてコメントさせて頂きます。桝太さん!こんばんは。「朗読」を趣味とする、70余歳のおじさんです。1ヶ月程前から登録して拝聴しております。当初、桝太さんのお声を耳にした際、学生時代よく聴いていた「ジェットストリーム」を思い出しました。貴男さまのお声で、ジェットストリームのナレーションを!声質が、酷似しています。昨今は、「夢十夜」に魅了されております。御身大切に、ご活躍をと、祈念しております。      感謝!🎤📖🍀
@readingmasuta
@readingmasuta Жыл бұрын
コメントを頂きありがとうございます。城達也さんのお声は私も大好きですので、とても嬉しいです。今後とも城さんのようなゆったりとした大人向けの朗読をお届けしたいと思っております、何卒よろしくお願いいたします。
@user-tz3nx3sc4v
@user-tz3nx3sc4v Жыл бұрын
桝太 さま! お忙しいところ、過日の私のコメントに、はあとマークを賜り、ありがとうございます。小生、ボランティア活動の中で、精神的に余裕があると、朗読によって如何に伝えるかor伝わるか等と、考え込んでしまうこともあります。配信を楽しみにしておりますが、どうか御身大切に、ご活躍くださいね!いっぱい感謝🍀
@user-tz3nx3sc4v
@user-tz3nx3sc4v Жыл бұрын
桝太 さま!夜中に、スミマセン。先程の私のコメントに、再びはあとマークを付して頂き、ありがとうございます。桝太様の日々の安全と、ご健康を祈念致しております。
@中澤みどり-v2c
@中澤みどり-v2c 4 ай бұрын
@runa555luna
@runa555luna 2 жыл бұрын
夢十夜は、本で読み好きになりましたが、こうしてよいお声の朗読で夜更けに聞くのも、また違う味わいがあり楽しいです✨心地よさを感じます。
@いあ-t8m1i
@いあ-t8m1i 3 жыл бұрын
夢十夜とても好きです。 朗読していただきながら眠れるなんて感激です。 毎晩聞いてます。 ありがとうございます!
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
こちらこそいつもお聴きいただきありがとうございます。今後もこのように眠りながらリラックスして聴ける朗読をお送りしていきたいと思います😌
@私-s3v
@私-s3v 3 жыл бұрын
喋り上手すぎです。主さん本当に素敵な声を持っているなと思ってしまいました。 文学すきなのでうれしいです、、これからたくさん聴きます!
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
ありがとうございます😌今後もスローペースですが文学作品を中心に朗読動画をお届けいたしますので、聴いていただけますと嬉しいです…
@にゃん太郎-c8m
@にゃん太郎-c8m 3 жыл бұрын
広告がない朗読は嬉しいです! 普段から朗読はよく聞いてますが、途中で広告が入ってしまうと、朗読の世界に浸っていたのに気分が壊れてしまったり、毎晩寝る前にも聞いてるんですが、せっかく寝つこうとしていたところを起こされたりするので、広告がない朗読チャンネルを探していました。 ありがとうございます😊
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
朗読の途中で広告が入ると浸れなくなってしまいますね…私もです。 今のところ週1更新ののんびりしたチャンネルですが、楽しんでいただければ幸いです😌
@bangkok0320
@bangkok0320 3 жыл бұрын
有り難う御座いました。 余計なことですが、和尚の室は「おしょうのむろ」、行燈は「あんどん」の気がします。
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
ご指摘ありがとうございます。新潮文庫のふりがなそのままに読んだのですが、これ自体、適切でないかもしれませんね…
@泉緑
@泉緑 3 жыл бұрын
なんだっけ、あのジェットストリームというの思い出した。素敵だ。
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
そこにお気づきいただるとは感無量です。ありがとうございます😌
@堀内錦治
@堀内錦治 2 жыл бұрын
プロではないと知り驚きました。何度も何度も読みト書も付け間も研究されての朗読でしょうか。 朗読もまた芸樹であると思います。アップありがとうございました。
@readingmasuta
@readingmasuta 2 жыл бұрын
恐縮です。私プロではありませんが、専門の技術を学び習得はしております。堀内さんのようなお言葉をいただけると大変励みになります!
@堀内錦治
@堀内錦治 2 жыл бұрын
@@readingmasuta やはりなぁ〜 企画・デザイン事務所を経営していた頃、京都のアナウンススクールの教科書や学校案内・生徒募集案内の広告・パンフの仕事を長く委託されて制作していましたので素人ながら少しは学びました。我が社のの留守電もそこの生徒さんの柔らか美声で入れておりました。数行のアナウンスでも素人とプロでは全く違いますもんね。 納得しました。今後ともご活躍ください。
@rktjmsh
@rktjmsh 2 жыл бұрын
このような朗読を探していました。癒される声、おだやかな抑揚の調子。不眠症の私も安らかに眠れます。ありがとうございます。
@readingmasuta
@readingmasuta 2 жыл бұрын
ありがとうござざいます。安眠のお手伝いをすることができ、嬉しいです!
@contrary-view
@contrary-view Жыл бұрын
私はこの日本の物語を学ぼうとしました。 難しいですが、日本語の単語を学ぶのに役立ちます。
@readingmasuta
@readingmasuta Жыл бұрын
ありがとうございます。お役に立てて光栄です…
@ohmoriroudoku
@ohmoriroudoku 3 жыл бұрын
とても落ち着く良い声ですね。 わかりやすく丁寧に読んでますね。 夢の中の幻想的な空気 朗読でこの漱石の不可解な不思議な感覚を出すのは難しいのでしょうね。 ここまで読めたらOKですね。
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
ありがとうございます。不可解、不可思議なお話だからこそ、あまり奇をてらわず、書いてある文章に従いそのまま読ませていただきました。
@motomi4665
@motomi4665 2 жыл бұрын
第7夜が、とても印象深い。作者の意図する深い意味は解らないが、行き先の解らない船がつき進んで行く。今の世界情勢、パンデミック、温暖化による災害、ロシア侵攻等先が見えない世界と重なる。船から身を投げる。飛び降り自殺する時は、きっとこう思うんだろうな😓時間にすれば数秒なんだろうけど…(;_;)
@readingmasuta
@readingmasuta 2 жыл бұрын
底が見えているのに、いつまでもそこにたどり着かない…夢だからこそ、このような物理法則を無視した体感的表現が可能なのかもしれません。
@子グマのコロちゃん
@子グマのコロちゃん Жыл бұрын
昔中学時代の友人がこの作品が面白いと言うので読んだことがあります。 その時はそれほど感じなかったのですが、その後大学生になってヘッセのメルヘンなどを読むと重なるところがあるなと思いました。 版権の問題などなければヘッセのメルヘンなども読んでいただけると嬉しいです。
@readingmasuta
@readingmasuta Жыл бұрын
ありがとうございます。残念ながらヘッセの著作権が切れるのは10年後… しかし調べたところメルヘンが書かれたのは夢十夜と同じくらいの時期なのですね。興味深い作品を教えていただきありがとうございます。
@子グマのコロちゃん
@子グマのコロちゃん Жыл бұрын
@@readingmasuta いつも丁寧な返信を下さりありがとうございます。十年後に生きているかどうかわかりませんが、楽しみにしています。 お礼を申し上げるのが遅くなりましたが、雨月物語も最後まで拝聴させていただきました。 朗読会の成功をお祈りしております。
@gabriel-9646
@gabriel-9646 3 жыл бұрын
初めまして。『夢十夜』が大好きで、ずっと長い間、各編の意味を感じとろうとして年齢を重ねてきました。次第に目も悪くなり…😅。こちらの朗読に出会えて喜んでいます。拙ブログにてシェアさせて頂きました。ありがとうございます✨
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
お聴きいただき、またブログにてご紹介までいただき、ありがとうございます😌夢十夜、何度読んでも深く考えさせられる作品ですね。則天去私、漱石の思索を探るのは知的好奇心をそそられます。今後もいろんな作品を読んで行きたいと思っております。
@あおい-i2k
@あおい-i2k 3 жыл бұрын
初めて拝聴しました。プロフェッショナルな方だと感じたのですが声のお仕事されているのでしょうか?
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
あおいさん始めまして、ますたと申します。朗読をお聴きいただきありがとうございます。恐縮ですが今のところ仕事としては活動しておりません。(趣味・健康促進が主です)
@あおい-i2k
@あおい-i2k 3 жыл бұрын
私も少々朗読勉強中ですので、枡太さんの朗読テクニックはとても素晴らしいなと思いました。またお邪魔させていただきます!
@二帖庵華厳
@二帖庵華厳 11 ай бұрын
毎晩のように聞いています。お声と語りが👌👌
@readingmasuta
@readingmasuta 11 ай бұрын
ありがとうございます!お気に召していただけて嬉しいです。
@山本佑菜
@山本佑菜 Жыл бұрын
夢N夜 第N夜 こんな夢を見た。 私が以前書いた夢十夜とか言う小説を床につきながら朗読して聞かせるラヂオの様なるものを見つけた。小恥ずかしくて落ち落ち寝付けない。
@readingmasuta
@readingmasuta Жыл бұрын
漱石先生でしょうか。どうもお世話になっております。まだ朗読したいお作がたくさん色々ございます、何卒ご容赦のほどを…
@user-it7pq3kx5k
@user-it7pq3kx5k Жыл бұрын
つになる子供を負おぶってる。たしかに自分の子である。ただ不思議な事にはいつの間にか眼が潰つぶれて、青坊主あおぼうずになっている。自分が御前の眼はいつ潰れたのかいと聞くと、なに昔からさと答えた。声は子供の声に相違ないが、言葉つきはまるで大人おとなである。しかも対等たいとうだ。  左右は青田あおたである。路みちは細い。鷺さぎの影が時々闇やみに差す。 「田圃たんぼへかかったね」と背中で云った。 「どうして解る」と顔を後うしろへ振り向けるようにして聞いたら、 「だって鷺さぎが鳴くじゃないか」と答えた。  すると鷺がはたして二声ほど鳴いた。  自分は我子ながら少し怖こわくなった。こんなものを背負しょっていては、この先どうなるか分らない。どこか打遣うっちゃる所はなかろうかと向うを見ると闇の中に大きな森が見えた。あすこならばと考え出す途端とたんに、背中で、 「ふふん」と云う声がした。 「何を笑うんだ」  子供は返事をしなかった。ただ 「御父おとっさん、重いかい」と聞いた。 「重かあない」と答えると 「今に重くなるよ」と云った。  自分は黙って森を目標めじるしにあるいて行った。田の中の路が不規則にうねってなかなか思うように出られない。しばらくすると二股ふたまたになった。自分は股またの根に立って、ちょっと休んだ。 「石が立ってるはずだがな」と小僧が云った。  なるほど八寸角の石が腰ほどの高さに立っている。表には左り日ひヶ窪くぼ、右堀田原ほったはらとある。闇やみだのに赤い字が明あきらかに見えた。赤い字は井守いもりの腹のような色であった。 「左が好いだろう」と小僧が命令した。左を見るとさっきの森が闇の影を、高い空から自分らの頭の上へ抛なげかけていた。自分はちょっと躊躇ちゅうちょした。 「遠慮しないでもいい」と小僧がまた云った。自分は仕方なしに森の方へ歩き出した。腹の中では、よく盲目めくらのくせに何でも知ってるなと考えながら一筋道を森へ近づいてくると、背中で、「どうも盲目は不自由でいけないね」と云った。 「だから負おぶってやるからいいじゃないか」 「負ぶって貰もらってすまないが、どうも人に馬鹿にされていけない。親にまで馬鹿にされるからいけない」  何だか厭いやになった。早く森へ行って捨ててしまおうと思って急いだ。 「もう少し行くと解る。――ちょうどこんな晩だったな」と背中で独言ひとりごとのように云っている。 「何が」と際きわどい声を出して聞いた。 「何がって、知ってるじゃないか」と子供は嘲あざけるように答えた。すると何だか知ってるような気がし出した。けれども判然はっきりとは分らない。ただこんな晩であったように思える。そうしてもう少し行けば分るように思える。分っては大変だから、分らないうちに早く捨ててしまって、安心しなくってはならないように思える。自分はますます足を早めた。  雨はさっきから降っている。路はだんだん暗くなる。ほとんど夢中である。ただ背中に小さい小僧がくっついていて、その小僧が自分の過去、現在、未来をことごとく照して、寸分の事実も洩もらさない鏡のように光っている。しかもそれが自分の子である。そうして盲目である。自分はたまらなくなった。 「ここだ、ここだ。ちょうどその杉の根の処だ」  雨の中で小僧の声は判然聞えた。自分は覚えず留った。いつしか森の中へ這入はいっていた。一間いっけんばかり先にある黒いものはたしかに小僧の云う通り杉の木と見えた。 「御父おとっさん、その杉の根の処だったね」 「うん、そうだ」と思わず答えてしまった。 「文化五年辰年たつどしだろう」  なるほど文化五年辰年らしく思われた。 「御前がおれを殺したのは今からちょうど百年前だね」  自分はこの言葉を聞くや否や、今から百年前文化五年の辰年のこんな闇の晩に、この杉の根で、一人の盲目を殺したと云う自覚が、忽然こつぜんとして頭の中に起った。おれは人殺ひとごろしであったんだなと始めて気がついた途端とたんに、背中の子が急に石地蔵のように重くなった。
@yanakanosakura
@yanakanosakura 2 жыл бұрын
こうした作品が書けるなんて夏目漱石先生は、げにお畏しい人だ☆彡
@readingmasuta
@readingmasuta 2 жыл бұрын
ありがとうございます。この作品は何度読んでも畏しい味わいがありますね…
@user-it7pq3kx5k
@user-it7pq3kx5k Жыл бұрын
広い土間の真中に涼み台のようなものを据すえて、その周囲まわりに小さい床几しょうぎが並べてある。台は黒光りに光っている。片隅かたすみには四角な膳ぜんを前に置いて爺じいさんが一人で酒を飲んでいる。肴さかなは煮しめらしい。  爺さんは酒の加減でなかなか赤くなっている。その上顔中つやつやして皺しわと云うほどのものはどこにも見当らない。ただ白い髯ひげをありたけ生はやしているから年寄としよりと云う事だけはわかる。自分は子供ながら、この爺さんの年はいくつなんだろうと思った。ところへ裏の筧かけひから手桶ておけに水を汲くんで来た神かみさんが、前垂まえだれで手を拭ふきながら、 「御爺さんはいくつかね」と聞いた。爺さんは頬張ほおばった煮〆にしめを呑のみ込んで、 「いくつか忘れたよ」と澄ましていた。神さんは拭いた手を、細い帯の間に挟はさんで横から爺さんの顔を見て立っていた。爺さんは茶碗ちゃわんのような大きなもので酒をぐいと飲んで、そうして、ふうと長い息を白い髯の間から吹き出した。すると神さんが、 「御爺さんの家うちはどこかね」と聞いた。爺さんは長い息を途中で切って、 「臍へその奥だよ」と云った。神さんは手を細い帯の間に突込つっこんだまま、 「どこへ行くかね」とまた聞いた。すると爺さんが、また茶碗のような大きなもので熱い酒をぐいと飲んで前のような息をふうと吹いて、 「あっちへ行くよ」と云った。 「真直まっすぐかい」と神さんが聞いた時、ふうと吹いた息が、障子しょうじを通り越して柳の下を抜けて、河原かわらの方へ真直まっすぐに行った。  爺さんが表へ出た。自分も後あとから出た。爺さんの腰に小さい瓢箪ひょうたんがぶら下がっている。肩から四角な箱を腋わきの下へ釣るしている。浅黄あさぎの股引ももひきを穿はいて、浅黄の袖無そでなしを着ている。足袋たびだけが黄色い。何だか皮で作った足袋のように見えた。  爺さんが真直に柳の下まで来た。柳の下に子供が三四人いた。爺さんは笑いながら腰から浅黄の手拭てぬぐいを出した。それを肝心綯かんじんよりのように細長く綯よった。そうして地面じびたの真中に置いた。それから手拭の周囲まわりに、大きな丸い輪を描かいた。しまいに肩にかけた箱の中から真鍮しんちゅうで製こしらえた飴屋あめやの笛ふえを出した。 「今にその手拭が蛇へびになるから、見ておろう。見ておろう」と繰返くりかえして云った。  子供は一生懸命に手拭を見ていた。自分も見ていた。 「見ておろう、見ておろう、好いか」と云いながら爺さんが笛を吹いて、輪の上をぐるぐる廻り出した。自分は手拭ばかり見ていた。けれども手拭はいっこう動かなかった。  爺さんは笛をぴいぴい吹いた。そうして輪の上を何遍も廻った。草鞋わらじを爪立つまだてるように、抜足をするように、手拭に遠慮をするように、廻った。怖こわそうにも見えた。面白そうにもあった。  やがて爺さんは笛をぴたりとやめた。そうして、肩に掛けた箱の口を開けて、手拭の首を、ちょいと撮つまんで、ぽっと放ほうり込こんだ。 「こうしておくと、箱の中で蛇へびになる。今に見せてやる。今に見せてやる」と云いながら、爺さんが真直に歩き出した。柳の下を抜けて、細い路を真直に下りて行った。自分は蛇が見たいから、細い道をどこまでも追ついて行った。爺さんは時々「今になる」と云ったり、「蛇になる」と云ったりして歩いて行く。しまいには、  「今になる、蛇になる、   きっとなる、笛が鳴る、」 と唄うたいながら、とうとう河の岸へ出た。橋も舟もないから、ここで休んで箱の中の蛇を見せるだろうと思っていると、爺さんはざぶざぶ河の中へ這入はいり出した。始めは膝ひざくらいの深さであったが、だんだん腰から、胸の方まで水に浸つかって見えなくなる。それでも爺さんは  「深くなる、夜になる、   真直になる」 と唄いながら、どこまでも真直に歩いて行った。そうして髯ひげも顔も頭も頭巾ずきんもまるで見えなくなってしまった。  自分は爺さんが向岸むこうぎしへ上がった時に、蛇を見せるだろうと思って、蘆あしの鳴る所に立って、たった一人いつまでも待っていた。けれども爺さんは、とうとう上がって来なかった。
@user-it7pq3kx5k
@user-it7pq3kx5k Жыл бұрын
こんな夢を見た。  和尚おしょうの室を退さがって、廊下ろうか伝づたいに自分の部屋へ帰ると行灯あんどうがぼんやり点ともっている。片膝かたひざを座蒲団ざぶとんの上に突いて、灯心を掻かき立てたとき、花のような丁子ちょうじがぱたりと朱塗の台に落ちた。同時に部屋がぱっと明かるくなった。  襖ふすまの画えは蕪村ぶそんの筆である。黒い柳を濃く薄く、遠近おちこちとかいて、寒さむそうな漁夫が笠かさを傾かたぶけて土手の上を通る。床とこには海中文殊かいちゅうもんじゅの軸じくが懸かかっている。焚たき残した線香が暗い方でいまだに臭におっている。広い寺だから森閑しんかんとして、人気ひとけがない。黒い天井てんじょうに差す丸行灯まるあんどうの丸い影が、仰向あおむく途端とたんに生きてるように見えた。  立膝たてひざをしたまま、左の手で座蒲団ざぶとんを捲めくって、右を差し込んで見ると、思った所に、ちゃんとあった。あれば安心だから、蒲団をもとのごとく直なおして、その上にどっかり坐すわった。  お前は侍さむらいである。侍なら悟れぬはずはなかろうと和尚おしょうが云った。そういつまでも悟れぬところをもって見ると、御前は侍ではあるまいと言った。人間の屑くずじゃと言った。ははあ怒ったなと云って笑った。口惜くやしければ悟った証拠を持って来いと云ってぷいと向むこうをむいた。怪けしからん。  隣の広間の床に据すえてある置時計が次の刻ときを打つまでには、きっと悟って見せる。悟った上で、今夜また入室にゅうしつする。そうして和尚の首と悟りと引替ひきかえにしてやる。悟らなければ、和尚の命が取れない。どうしても悟らなければならない。自分は侍である。  もし悟れなければ自刃じじんする。侍が辱はずかしめられて、生きている訳には行かない。綺麗きれいに死んでしまう。  こう考えた時、自分の手はまた思わず布団ふとんの下へ這入はいった。そうして朱鞘しゅざやの短刀を引ひき摺ずり出した。ぐっと束つかを握って、赤い鞘を向へ払ったら、冷たい刃はが一度に暗い部屋で光った。凄すごいものが手元から、すうすうと逃げて行くように思われる。そうして、ことごとく切先きっさきへ集まって、殺気さっきを一点に籠こめている。自分はこの鋭い刃が、無念にも針の頭のように縮ちぢめられて、九寸くすん五分ごぶの先へ来てやむをえず尖とがってるのを見て、たちまちぐさりとやりたくなった。身体からだの血が右の手首の方へ流れて来て、握っている束がにちゃにちゃする。唇くちびるが顫ふるえた。  短刀を鞘へ収めて右脇へ引きつけておいて、それから全伽ぜんがを組んだ。――趙州じょうしゅう曰く無むと。無とは何だ。糞坊主くそぼうずめとはがみをした。  奥歯を強く咬かみ締しめたので、鼻から熱い息が荒く出る。こめかみが釣って痛い。眼は普通の倍も大きく開けてやった。  懸物かけものが見える。行灯が見える。畳たたみが見える。和尚の薬缶頭やかんあたまがありありと見える。鰐口わにぐちを開あいて嘲笑あざわらった声まで聞える。怪けしからん坊主だ。どうしてもあの薬缶を首にしなくてはならん。悟ってやる。無だ、無だと舌の根で念じた。無だと云うのにやっぱり線香の香においがした。何だ線香のくせに。  自分はいきなり拳骨げんこつを固めて自分の頭をいやと云うほど擲なぐった。そうして奥歯をぎりぎりと噛かんだ。両腋りょうわきから汗が出る。背中が棒のようになった。膝ひざの接目つぎめが急に痛くなった。膝が折れたってどうあるものかと思った。けれども痛い。苦しい。無むはなかなか出て来ない。出て来ると思うとすぐ痛くなる。腹が立つ。無念になる。非常に口惜くやしくなる。涙がほろほろ出る。ひと思おもいに身を巨巌おおいわの上にぶつけて、骨も肉もめちゃめちゃに砕くだいてしまいたくなる。  それでも我慢してじっと坐っていた。堪たえがたいほど切ないものを胸に盛いれて忍んでいた。その切ないものが身体からだ中の筋肉を下から持上げて、毛穴から外へ吹き出よう吹き出ようと焦あせるけれども、どこも一面に塞ふさがって、まるで出口がないような残刻極まる状態であった。  そのうちに頭が変になった。行灯あんどうも蕪村ぶそんの画えも、畳も、違棚ちがいだなも有って無いような、無くって有るように見えた。と云って無むはちっとも現前げんぜんしない。ただ好加減いいかげんに坐っていたようである。ところへ忽然こつぜん隣座敷の時計がチーンと鳴り始めた。  はっと思った。右の手をすぐ短刀にかけた。時計が二つ目をチーンと打った。
@yumikofujiwara-mj6ho
@yumikofujiwara-mj6ho 5 ай бұрын
6😂😂😂
@user-it7pq3kx5k
@user-it7pq3kx5k Жыл бұрын
こんな夢を見た。  何でもよほど古い事で、神代かみよに近い昔と思われるが、自分が軍いくさをして運悪く敗北まけたために、生擒いけどりになって、敵の大将の前に引き据すえられた。  その頃の人はみんな背が高かった。そうして、みんな長い髯を生はやしていた。革の帯を締しめて、それへ棒のような剣つるぎを釣るしていた。弓は藤蔓ふじづるの太いのをそのまま用いたように見えた。漆うるしも塗ってなければ磨みがきもかけてない。極きわめて素樸そぼくなものであった。  敵の大将は、弓の真中を右の手で握って、その弓を草の上へ突いて、酒甕さかがめを伏せたようなものの上に腰をかけていた。その顔を見ると、鼻の上で、左右の眉まゆが太く接続つながっている。その頃髪剃かみそりと云うものは無論なかった。  自分は虜とりこだから、腰をかける訳に行かない。草の上に胡坐あぐらをかいていた。足には大きな藁沓わらぐつを穿はいていた。この時代の藁沓は深いものであった。立つと膝頭ひざがしらまで来た。その端はしの所は藁わらを少し編残あみのこして、房のように下げて、歩くとばらばら動くようにして、飾りとしていた。  大将は篝火かがりびで自分の顔を見て、死ぬか生きるかと聞いた。これはその頃の習慣で、捕虜とりこにはだれでも一応はこう聞いたものである。生きると答えると降参した意味で、死ぬと云うと屈服くっぷくしないと云う事になる。自分は一言ひとこと死ぬと答えた。大将は草の上に突いていた弓を向うへ抛なげて、腰に釣るした棒のような剣けんをするりと抜きかけた。それへ風に靡なびいた篝火かがりびが横から吹きつけた。自分は右の手を楓かえでのように開いて、掌たなごころを大将の方へ向けて、眼の上へ差し上げた。待てと云う相図である。大将は太い剣をかちゃりと鞘さやに収めた。  その頃でも恋はあった。自分は死ぬ前に一目思う女に逢あいたいと云った。大将は夜が開けて鶏とりが鳴くまでなら待つと云った。鶏が鳴くまでに女をここへ呼ばなければならない。鶏が鳴いても女が来なければ、自分は逢わずに殺されてしまう。  大将は腰をかけたまま、篝火を眺めている。自分は大きな藁沓わらぐつを組み合わしたまま、草の上で女を待っている。夜はだんだん更ふける。  時々篝火が崩くずれる音がする。崩れるたびに狼狽うろたえたように焔ほのおが大将になだれかかる。真黒な眉まゆの下で、大将の眼がぴかぴかと光っている。すると誰やら来て、新しい枝をたくさん火の中へ抛なげ込こんで行く。しばらくすると、火がぱちぱちと鳴る。暗闇くらやみを弾はじき返かえすような勇ましい音であった。  この時女は、裏の楢ならの木に繋つないである、白い馬を引き出した。鬣たてがみを三度撫なでて高い背にひらりと飛び乗った。鞍くらもない鐙あぶみもない裸馬はだかうまであった。長く白い足で、太腹ふとばらを蹴けると、馬はいっさんに駆かけ出した。誰かが篝りを継つぎ足たしたので、遠くの空が薄明るく見える。馬はこの明るいものを目懸めがけて闇の中を飛んで来る。鼻から火の柱のような息を二本出して飛んで来る。それでも女は細い足でしきりなしに馬の腹を蹴けっている。馬は蹄ひづめの音が宙で鳴るほど早く飛んで来る。女の髪は吹流しのように闇やみの中に尾を曳ひいた。それでもまだ篝かがりのある所まで来られない。  すると真闇まっくらな道の傍はたで、たちまちこけこっこうという鶏の声がした。女は身を空様そらざまに、両手に握った手綱たづなをうんと控ひかえた。馬は前足の蹄ひづめを堅い岩の上に発矢はっしと刻きざみ込んだ。  こけこっこうと鶏にわとりがまた一声ひとこえ鳴いた。  女はあっと云って、緊しめた手綱を一度に緩ゆるめた。馬は諸膝もろひざを折る。乗った人と共に真向まともへ前へのめった。岩の下は深い淵ふちであった。  蹄の跡あとはいまだに岩の上に残っている。鶏の鳴く真似まねをしたものは天探女あまのじゃくである。この蹄の痕あとの岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵かたきである。
@BobMarley-sv3jn
@BobMarley-sv3jn 2 жыл бұрын
第一夜と、第五夜の恋が絡むやつが好きだなあ
@readingmasuta
@readingmasuta 2 жыл бұрын
ありがとうございます。私もこういうロマンティックな作品が夏目漱石先生の真骨頂だと思います。
@user-hn5sy2ee2x
@user-hn5sy2ee2x 3 жыл бұрын
これって広告つかないんですか?
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
コメントありがとうございます。現在はチャンネルの収益化に至っておりませんので、広告は設定されていないものと思われます…
@0874
@0874 3 жыл бұрын
とても素晴らしいお声をお持ちですね。 心地よく拝聴させて頂きました。アナウンサーの方の朗読を聴いているようです。
@readingmasuta
@readingmasuta 3 жыл бұрын
ありがとうございます。そう仰っていただければ感無量です。。。今後も研鑽を重ねていろんな作品をご紹介したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします😌
@るたこ-b7z
@るたこ-b7z Жыл бұрын
サムネの字のフォントはどこのやつでしょうか。教えていただきたいです。
@readingmasuta
@readingmasuta Жыл бұрын
「文学の旅」「夏目漱石」「夢十夜」の文字でしょうか?これは、私の手書きです…
@るたこ-b7z
@るたこ-b7z Жыл бұрын
@@readingmasuta とても綺麗な字ですね。憧れます。
@松井テルヨシ
@松井テルヨシ 7 ай бұрын
はるか昔読んだことがある。今回聞いてみて一つも覚えていなかった。それにこんな話があったはずだがと思っていたのに、それがなかった。ではその話はいったいどこへいったのだろうか? 不思議でならない。
@readingmasuta
@readingmasuta 7 ай бұрын
もしかすると、内田百閒の「冥途」「旅順入城式」といった、初期の作品なのかもしれません。彼は漱石の門弟でもあり、初期は夢十夜にかなりよく似た作品を書いています。
@akiraitty03
@akiraitty03 2 жыл бұрын
行燈 あんどん
@runa555luna
@runa555luna 2 жыл бұрын
枡太さま✨いつも心地よい朗読有難うございます💗最近2回コメントさせていただきましたが、二回共お返事いただけなくて寂しいです。皆様方はそれぞれお返事いただいておられますので、私のコメントの内容がよくなかったのかしら、、と悶々といたします。如何でしょうか❔
@readingmasuta
@readingmasuta 2 жыл бұрын
ありがとうございます。頂いたコメント、有り難く読ませていただいております。最近コメントをお返しする余裕がなく、申し訳ありません。。。
@runa555luna
@runa555luna 2 жыл бұрын
@@readingmasuta 枡太さま💗お返事の催促申し訳ございません_(._.)_色々ご事情もあるので、また落ち着かれた時に楽しみにしてます💗
@tetsunosukematsuda9578
@tetsunosukematsuda9578 3 жыл бұрын
0
@孝子-j3k
@孝子-j3k 3 жыл бұрын
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