品川歴史探訪 湧水と水神 ～大井～

ナレーション「東京都品川区大井」
ナレーション「かつてこの地には、多くの湧水地と用水路があり、農村風景が広がっていました」
ナレーション「水とともに発展した大井のまち、その面影を訪ねてみましょう」
ナレーション「大井のまちと水とのつながり。それはこの街の名前『大井』の中にも隠されています」
ナレーション「ここは大井六丁目にある大井山光福寺」
ナレーション「その本堂の裏をのぞいてみると、横穴式の井戸が残されています」
ナレーション「地名『大井』の発祥のひとつとされる大井の井です」
ナレーション「この井戸は、御家人大井氏の出身で鎌倉時代の名僧了海上人産湯の井と伝えられています」
ナレーション「また了海は大井の蔵王権現にお祈りしたことで生まれたという言い伝えも残されており、蔵王権現信仰との繋がりを感じさせます」
ナレーション「境内にある、ひときわ目を惹く大イチョウ。元々光福寺は延暦元年、782年に建てられたと伝えられる天台宗のお寺でしたが、文永2年、1265年、了海上人によって天台宗から浄土真宗に改宗され、『光福寺』と名を改めました」
ナレーション「このイチョウは、了海上人が麻布の善福寺から枝を譲り受け、境内に埋めたものだとも言われています」
　
ナレーション「品川区で最も古く大きいこのイチョウは海で魚をとる漁師たちの目印になっていただけでなく、数百年にわたって大井のまちを見守り続けてきました」
ナレーション「西大井三丁目。閑静な住宅地の中にひっそりとたたずんでいるのが大井・原の水神池です」
ナレーション「江戸時代、当時の大井村のあたりでは、農業が盛んでした。水の恵みに感謝した村の人々が、農耕や日常生活に欠かせない水を確保し続けたいという願いを込めて水神様のほこらを建て、大井・原の水神池として大切に守ってきました」
倉本さん「この周りがほとんど農家でね、ニンジンとか大根、キャベツとかつくっていた農家だった。その約50名が集まって、地主になっているんですけど、この池が倍以上大きかったんですね。当時は。そこで、下のほうで野菜を洗ったり、そういう形で元々は洗場組合というのをつくっていたんですけど、当時はかなり地下水が出ていまして、きれいな水だということで、目を悪くした人がそれを汲んでいって、治したらすぐ治ったというような言い伝えがありました。そのお礼に鯉をみんなで放ったということです。家が建ち込んでいますが、当時はうっそうとした森だったというような話ですね。小学校の時はここはいい遊び場でした。こういう柵になっちゃって、ちょっとさみしくなっちゃたんですけどね」
ナレーション「池の傍らにある大正14年建立の碑には、風習の他にも関東大震災以後は貯水池として利用されたことなどが記されています。そして文末にはこんな歌が添えられています」
ナレーション「『湧きいでて盡きぬ　清水は時の世を　皆それぞれに恵むなりけり』」
ナレーション「時代とともに様々な恵みを与え続けて来た水神池。現在も湧き出る池の水は、大井のまちが様々な時代を経て発展してきた事を物語っています」
ナレーション「大井は立会川流域の一部を除くと、その多くが丘陵地帯で水に恵まれていませんでした。そのため人々は、自然の湧水を貴重な水源として活用してきました」
ナレーション「南大井五丁目にある大井の水神。人と水との関わりを伝える場所として今もまちを見守り続けています」
ナレーション「安政4年、1858年にかかれた南浦地名考。ここには柳の清水という名で不切名誉の出水として人々に親しまれてきたことが記されています。この湧き水に水神が祀られたのは今から300年以上前のことです」
ナレーション「貞享2年、1685年大旱魃が大井を襲います」
ナレーション「100日続く旱魃（かんばつ）にも途切れることのなかった、名誉ある湧き水と言われていた柳の清水も例外ではありませんでした」
ナレーション「水が枯れることを恐れた村人たちの願いを受けた常林寺、現在の来迎院の住職は、加持祈祷を行い、水神である九頭龍権現を勧請。水神社として創建したことが大井の水神の始まりとされています」
岩城住職「このあたり一体というよりも、大井もずっと向こうの方まで、水位が悪いところは水が日照りで困ったので、栄往和尚が7日ご祈祷をした。そのご祈祷をした7日目に大雨が降った。今で言えば城南地区一帯の農民が、助かったということが記録にあります。今から70、80年前、私が子どものころですね、お参りに行くと昔の歯ブラシがよく上がっていましたね。それがたくさん上がっていましたから、おそらく歯の病が治るという、そんな信仰もあったんじゃないかと思います」
ナレーション「水とともに発展した大井のまち」
ナレーション「その歴史を紐解くと、当時の人々の想いを感じ取ることができます」
ナレーション「品川区には身近な所に歴史を感じさせる貴重な史跡や文化財が数多く残っています」
ナレーション「次回も品川歴史探訪をお楽しみに」