JAL516便は、羽田のタワー管制とのやり取りを始めた際、"we have a departure"(出発便あり)という連絡を受けましたが、それは滑走路にまだ離陸しようとしている別の飛行機があるという注意連絡です。指したのは前に離陸したJAL25便(北京行き)でした。小型の海保機が見えたか否かは別として、北京行きの大型のボーイング787が離陸したことは、JAL516便のコックピットから見えたと思われます。その後、516便のパイロットたちにとっては、滑走路が空いていることを疑う理由が全くありませんでした。
事故原因は、ランウェイへの進入許可を得ていないのに滑走路に入った海保機のミスだけど、管制官も管制規則で言わなければいけない「hold short of runway 34 right」を言っていない。 管制官側の落ち度はこれ。でも、羽田の管制官はみんな普段からほとんど言ってなかった。だから当該管制官だけでなく羽田の管制全体の問題。 いつも羽田の管制は「taxi to holding point〜」と言っていた。これ、わかりやすくいうと「止まれの標識まで進んで」と言っているが「止まれの標識で止まれ」とは言っていない。でも「入っていいとは言っていないから止まるだろう」と暗黙の意味合いを込めて管制官は言っている。いつもね。 そして、普段はこの止まれの標識で必ず止まらせているかというと、そのまま進入させることもある。だから止まれと言わなくても止まるだろう、というのは、実は誤解を生みかねない危険な状況だった。No.1という用語に拘っているマスコミばかりだけど、全く関係ないよ。 だから、進入許可を得ていないで入ってしまった海保機の行動が原因ではあるけど、遠因として、あるいは防げなかった要因として、普段から羽田の管制官が「Taxi to hold point〜」だけで、ルールに定められた「Hold short of ranway〜」を言っていなかった、羽田のローカル運用があった。 だから、運用再開された羽田空港では、今までほとんどの管制官が指示しなかった「Hold short of ranway〜」がコレでもか、と徹底してほぼ全ての飛行機に指示出されている。遠因がそれだと理解しているから改めたのだろう。ちなみに、この指示はもともと滑走路に入ってはいけない飛行機に出すことが義務付けられているが、順番に並んでいる飛行機の先頭の1機にだけ出せばいいことになっている。後ろの飛行機が追い越して滑走路に入ることは不可能だからね。