書店「ゼロ」の街にあらたに出店 業界の諦めムードに「待った」 ４代目本屋さんの思い (2024/04/29

最盛期から半減したとも言われる全国の「町の本屋さん」。
そんな中、まもなく庄原市に新たな書店が誕生しようとしています。
あえて、人口減少が進む町に店を構える理由をツイセキします。
先週、庄原市内の店舗に横付けされた一台の大型トラック。
次々と運びこまれるのは、新しい本が詰まった段ボールです。
【総商さとう（運営会社）・佐藤友則社長】
「雑誌、コミック、文庫、それから実用書とか…ざっと金額で言うと２０００万円くらい」
Q：２０００万円ですか？結構ですね。
「本屋さんをオープンすると言ったら小さな店でもそれくらい」
庄原市に来月できる「町の本屋さん」の準備が本格的に始まりました。
周辺で曾祖父の代から書店を営んできた佐藤友則さんが旗振り役です。
【総商さとう（運営会社）・佐藤友則社長】
「経営面だけを考えるとやれない業種になっているのは確かですね」
Q：それでもやると？
「それでもやろうと思ったし、それでもできるんだということを証明する役割だと思っています」
庄原市中心部では去年、２つの店舗が相次いで閉店。
古本店はあるものの書店の空白地帯となっていました。
全国的に見てもこの２０年間でネット販売の台頭やデジタル化のあおりを受け半分にまで減少。
そんな中、中山間地域の人口およそ３万の町に新たに店を出し、業界の「重苦しい雰囲気」を打ち破ろうとしています。
【総商さとう（運営会社）・佐藤友則社長】
「地域に本屋があるということがきっと１０年後２０年後また新しい世の中をつくっていく子供たちの礎になると思うので。本屋の再生だけではなくていわゆる町の再生だとか町がもう一度元気になっていく…そういうきっかけになる本屋になればいいなと思ったので、あえて本屋だけで」
森林浴のように「本」を優しく「浴び」てもらいたいとの願いを込めて店の名前は「ほなび」にしました。
「再び町ににぎわいを…」その思いを形にするのは、佐藤さんが経営する別の書店で働いてきた２０代のスタッフです
【「ほなび」嘉壽茉莉さん（２０）】
「スマホの情報ってスマホを持っている人だと全員が受け取れる情報なんです。けど、本って出た冊数分、１０００冊刷ったら１０００人の人しか読めないんですよ。１０００人の人しか手元に持てないんです。そういう貴重な情報とか貴重さというものが本の一番いいところかなと思って」
【「ほなび」原田彩花店長（２２）】
「本に会いに来てくれたらいいなと思います。本にも本を売るスタッフにも会いに来たいと思ってもらえるように頑張りたい」
おととい…開店前にも関わらず地元の人たちが集まっていました。
【総商さとう（運営会社）・佐藤友則社長】
「宜しくお願いします」
「本屋さん」を待ちきれない子供から大人までが噂を聞きつけ、ボランティアとして手伝いに来ました。
【本が大好き小学４年生は】
「こういうことが普通だったらできないから貴重だなと思ってやりたかった」
【書店が憩いの場だった６０代は】
「みんなが見に来てくれればいいかなと。まず第一に自分が見に来られるなという喜びです」
本を大きさとジャンルごとに選別しながら棚に運び入れていきます。
子供たちに本にふれるきっかけの場を作ろうと、絵本などの児童書を多く取り揃えました。
地域の人が一冊一冊に思いを込めて並べた本棚、一気に「町の本屋さん」らしくなりました。
【総商さとう（運営会社）・佐藤友則社長】
「思いや熱量は想像以上でした。一回地域からなくなった本屋さんを応援してあげたいという気持ちの現れだと思います」
【「ほなび」・原田彩花店長（２２）】
「『この本屋が危なくなったら私たちで支えようねって話しているんよ』と言ってくれる人もいて、嬉しいなとお応えしなきゃなと」
「ほなび」のオープン予定日は来月１０日。
中山間地域に書店という文化の灯をともし続ける挑戦が始まります。
【総商さとう・佐藤友則社長】
「最初だけよかったとか、そういうことではなくて、だんだんとよくなっていく。そうでないといけないと思いますし。それは地域の人と一緒によりよい店をつくっていくというのはオープンしてからですね」
（スタジオ）
街を歩いても本屋を目にすることって本当に減りましたね。
【コメンテーター：元カープ・山内泰幸さん】
「地域の人が集まり触れ合い話し合える場所になるかもしれないですね。本屋さんが全国的に減少しているのにびっくりしました。名前が本を浴びるように「ほなび」という名前がいいですし、地域の方々デザインキットじゃないですか待望の場所になるんじゃないでしょうか」