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今回は「男のための空間が住まいの中にあってもいいんじゃないの?」というテーマで、一人喋りをしていきたいと思います。
まず冒頭にお答えしておきますが、もちろん家の中には女性のための空間や場所も必要です。ですが、今日は僕が男なので、男の目線でお話しさせていただきます。そこはどうぞご勘弁いただいて、気楽に付き合ってもらえたら嬉しいです。では、いつものように僕の板書を見ながら話を聞いてください。
私には師匠が何人かいるんですけど、建築設計の師匠は松尾先生や飯塚先生、大西健二先生といった方々です。でも、人生を生きていく上での師匠という意味では、「メガネのカリスマ」と呼ばれている先生がいます。その先生からは、「家というものは、そもそも女性のためのものなんだよ」という持論を教えられてきました。それを聞いた時、僕も「ほんまそうやな」と感じて胸に秘めてきました。自分ができているかどうかは別として、そういう考えは本当に大事だと思っています。
その師匠が言うには、「理想の夫婦の暮らし方は、高倉健さんみたいな感じだよ」と。最初は「何の話?」と思いましたが、こう説明されました。「家に帰ったら、当たり前のように奥さんがご飯を作ってくれている。その時は、奥さんの目をじっと見て、『姐さん、今日もご飯いただきます』と高倉健ばりに言え。そして『お先にお風呂いただきます』と、まるで任侠映画のセリフのように、マナーと心意気を持って暮らせばいいんだ」と。
最初はちょっと昭和の感覚かなと思いましたが、確かに僕も仕事ばっかりして帰ったらご飯食べて、お風呂入って寝る、みたいな生活でした。妻に対して、そんな風に丁寧に向き合えたら、それに勝るものはないなと感じたんです。そして、「家の主は女性なんだ」ということが腹に染みたというか、腑に落ちた瞬間でした。
ただ、僕みたいな働き盛りの頃の男性は、「家は帰って寝るだけの場所」みたいに思いがちだったんです。でも、今は家族との時間や自分の時間を大切にする男性が増えてきていて、それなら男性のための空間があってもいいのかな、とも思います。この流れで、僕の中にひとつの質問が浮かびました。それは、「旦那さんの居場所って家の中にありますか?」ということです。
これは、家族に嫌われて居場所がないとか、そういう話ではありません。自分にとっての心の拠り所となる居場所、という意味です。女性はそういうのが上手だと思います。どんな場所でも自分の居場所にできる多様さを持っていますよね。子供には子供部屋があるのに、男性だけが「ここが自分の居場所だ」と思える場所が案外ないことが多いんじゃないか、と思うんです。
実は、この「男のための居場所」という考え方に強烈な影響を与えられた人がいます。それが群馬県の小暮さんという方です。彼は、「男の居場所は必要です」と断言するタイプで、僕も最初は「寂しいのか、お前」みたいなノリで聞いていました。でも彼は、「家族と穏やかな生活をするためには男の居場所も必要なんです」と言うんです。それを聞いて、なるほどと思いました。
男というのは、一人の時間を大切にする人が多いですよね。それが家じゃなくても、車で一人ドライブしたり、山の中にぼーっと入り込んだり、港に車を止めてタバコをふかしたりする。高倉健さんもよくそんなシーンを演じていましたよね。
家の外で自分の居場所を作ると、家族からの評判があまり良くないことがあります。「いつも家にいない」「帰りが遅い」「どこに行っていたのかわからない」と言われたり、「また勝手に一人でキャンプに行ったの?」なんて言われることもあります。そう考えると、小暮さんの意見を全面的に参考にするのは難しいですが、彼が言う「一人の時間を作ることでリフレッシュできる」というのは確かに納得できます。
一人の時間は、ただボーッとするだけではなく、仕事のことやこれからの人生を考える場にもなるんですよね。建築の師匠である飯塚先生も、「家は家族が一緒にいられる安心感だけでなく、一人になれる安心感も必要だ」とおっしゃっていました。これは子どもの部屋に関する話でしたが、父親や母親、祖父母にも当てはまることだと思います。
だからこそ、家を新築する時やリフォーム、リノベーションする際に、「男のための居場所」を考えてみるのも良いのではないかと思います。僕が思うに、まずは広めの机と座り心地のいい椅子があるだけで、立派な男性の空間ができます。
例えば、最近読んでいない本を引っ張り出してみたり、漫画を読んだりする時間が作れるといいですよね。僕は漫画が好きで、手塚治虫さんの作品をはじめ、古いものから新しいものまでよく読みます。そういう時間を持てるのはとても大切だと思います。
小暮さんが言っていたメリットの一つに、「一人の時間を作ることで負の感情をリセットできる」というのがあります。怒りや悲しみ、イライラといった感情を切り替える時間を持つことで、家族に嫌な顔を見せずに済む。これは本当に重要なことです。さらに、趣味や好きなものに囲まれる喜びもあります。例えば、ガンダムが好きな人は、そのコレクションを並べるだけでも満たされるでしょう。僕の場合は、本棚に本を並べて、気になったものを手に取るだけで幸せを感じます。
こうした空間は、畳半分のスペースからでも作れます。「お父さん、家の中で半畳だけ占拠させてもらえませんか?」なんて頼んでみるのもアリじゃないでしょうか。意外と「それくらいならいいよ」と言ってくれる家族が多い気がします。その半畳を使って、収納やパントリーにするのではなく、自分の居場所にする。それが「書斎」のすすめです。
書斎というのは、いわゆる「隠し部屋」や「ピット」とも言えるものです。例えば階段下の空間を活用して、床を少し下げたピット風のスペースを作る。そんな隠れ家的な場所に入っていると、ちょっとワクワクしませんか?僕だけでしょうか。
さらに、寝室の一部をカウンターや本棚にするのもいいですね。以前、高岡モデルハウスで書斎スペースを作ったことがありますが、それを参考にして、もっとシンプルに作れば十分です。
例えばコレクションルームが欲しい人っていますよね。先日、妻と九州方面へ旅行し、素敵な旅館に泊まりました。その旅館で訪れたのが「コレクションルーム」。写真を見ていただくとわかりますが、高級なプレミアム焼酎がずらりと並び、入った瞬間「うわぁ、ここから出たくない!」と思ったほど魅力的な空間でした。
こうした「自分だけの特別な空間」、実は住まいの中にも作れるんですよね。例えば、本棚の多い部屋も、ある意味ではコレクションルーム。切手を集める方やガンプラ好きの方にとっては、それぞれのコレクションが輝く特別な空間です。
他にも、音楽部屋なんてのもいいですよね。僕自身はピアノが弾けないので憧れるだけですが、ギター好きの弟がギター部屋を作っていて、そこでお気に入りのギターを並べて「ジャガジャガ」楽しんでいます。映画好きなら、オーディオやビジュアル設備を充実させたシアタールームも夢が広がります。
また、アウトドア好きなら、土間やデッキを活かしたキャンプや自転車のギア置き場を。車やオートバイ好きなら、ガレージが理想的ですよね。「リベンジ消費」で昔叶わなかった夢を追いかける方も増えているようで、こうした趣味の空間が再び注目されています。
さらに、アトリエ系もおすすめ。絵を描いたり、プラモデルを作ったり、溶接で作品を作るなど、何かを生み出す空間を楽しむ方もいます。僕自身、大工の息子として育ったので、木工の楽しさもよくわかります。
ほかにもジム部屋やペット専用スペースなど、趣味や癒しの場を住まいに取り入れることで、自分らしい暮らしが実現できます。
こうした空間作りは、大きなスペースを必要としません。たった半畳からでも、自分だけの居場所を作れるんです。もちろん、男性だけでなく、奥様のための空間も一緒に考えることが大切です。
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