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「おれはやってきたゾ。何でお前はできないんだ」とつい私たちは思ってしまいますが、相手の置かれている環境は、自分の時とは大きく違うのですから、相手の立場をよく知った上でのアドバイス、対処法を一緒に考えなければなりません。
今日はその一例として「貧困世代」についてお話しいたします。
いまの日本の若者は、現在、そして将来も大変な貧困に陥らざるをえない「貧困世代」であると、警鐘を鳴らす人が増えてきました。
気付かない間に、あるいは生まれた時からすでに「窮屈さ」を宿命づけられている世代だと評されます。
親世帯の収入が20年前と比べて20%下落するなか、学費は高騰しています。
1990年代半ばでは、学生の6割以上が月に10万円の仕送りをもらっていましたが、今、10万円以上は3割以下で、5万円未満の学生がどんどん増えています。
そうした中で、学費や生活費をまかなうために、奨学金を借りる学生は51%になっています。
彼らは社会に出る前に300万~800万円という巨額の負債を背負わされるのです。
それでも社会人になり、安定した収入があり、給料も年々アップし、ボーナスもきちんと支給されれば返済できるのでしょうが、非正規社員の割合が高くなり、残業手当も出ないブラック企業もはびこり、現在の若者の給与は20年前と比較しても、安くなっています。
若者の実家暮らしが増えているのは、一人暮らしの家賃が払えないからであり、「結婚や子育てはぜいたくだ」「新車なんか想像もできない」という実態です。
それら若者の現状に対して典型的な高齢者(政治家含む)は「自分たちは何もない中、何とか工夫努力して這い上がってきた。裕福な時代に生きている今の若者は、当時に比べれば、大変ではないだろう」と語ります。
そして「若いうちの苦労は買ってでもしろ」と、若いうちに努力して成功体験のある彼らは、どこかうれしそうにアドバイスします。
しかしそれらの高齢者(政治家含む)の意見に、切実な若者の現状を知るソーシャルワーカーたちは、「古き良き時代に生きてきたとしかいいようがない」と、憤りを覚えて言います。
確かに昔は貧乏で、物質的に恵まれない時代だったかもしれません。
しかし周囲の人々も同じような環境であり、近所のおじさんおばさんも若い人の困り事に対応してくれ、安い下宿先を紹介してくれました。
いずれこの若者たちが社会を支えていくんだと、期待感を持って接してくれていました。
また事実、賃金も上昇していき、家庭も家も車も持てるようになっていったので、苦しいけどもがんばろうと思えました。
今はどうか。
正社員と非正規社員かで分断され、連帯できる仲間意識もなく、彼らは孤独です。
家族にも理解してもらえていません。
ある者は奨学金で借金漬けになり、ある者はブラック企業で身体を壊し、ある者は不安定な雇用から家賃滞納で住む家を失っています。
それが何か特別に「失敗」をしたわけでもない若者たちの惨状です。
日本社会において、経済的にも、人口でも大きな影響力を持っている高齢者が、これら若者の現状を「甘え」だとか「軟弱」だとかいう言葉で片付けようとせず、相手の立場に立って考えていくべき日本全体の問題でしょう。
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1988年早稲田大学を中退し、仏教講師の道を目指す。
浄土真宗親鸞会で仏教講師の資格を取得、全国各地で公開講座を始める。
2010年からメールマガジンをはじめ、読者12000人の仏教最大級のメルマガ執筆
2014年からは全国をつなぐオンライン講座の動画レクチャーでも活動中。
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