20グラムのチョコレートさんの質問に答えます。 「彼は自分の言ったことをわかってない」という文ですが、まず「彼」=「自分」の場合は、「自分」を照応詞と考えればいいと思います。ここでは、照応詞とは同じ文の中に先行詞(照応詞が指すもの)が必要な名詞の一種としておきます(多分正しくない・・・)。そうすると英語の再帰代名詞的も照応詞の一種です。ただ厳密にはいろいろ違っていて、例えば: (1) 太郎は自分が天才だと思っている。 (2) John thinks {he/*himself} is a genius. (1) のように日本語では主節の主語が埋め込み文の主語の「自分」の先行詞になれますが、(2) のように英語の himself は主節主語を指せません。ですので he を使います。多分この英語の事実に関して水野さんが時制文条件の話をしていましたが、日本語の「自分」には関係ありません。20グラムのチョコレートさんの例文自体が「彼は[自分の言った]ことをわかってない」という節の埋め込みを伴っているので英語にすると (2) と同様に He doesn't undertand what {he/*himself} said とかになると思います。 そして「自分」が話者(私)を指す場合は、1人称の代名詞として振る舞っています。ですので「自分」は照応的に使われる場合と1人称代名詞として使われる場合があります。ちなみに関西弁では2人称代名詞として使われる場合もあります。特に疑問文などでよくみられ「自分何してんの?」のような文が考えられます。 まあ「自分」の統語的・意味的特性に関しては本当はもっといろいろあって、もし言語学の勉強されている方がいるなら以下の論文を少し読んでみてもいいかも知れません。英語ですけど・・・ Nishigauchi, T. (2014) Reflexive binding: awareness and empathy from a syntactic point of view. Journal of East Asian Linguistic Volume 23, pages 157-206.