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夜が明け白み始めた空に、四角に刈られた木々のシルエットが浮かびあがる。静かに水をたたえる田んぼに、枝葉が織りなす幾何学模様が鏡のように映り込んだ。太陽が昇ると、はるかに広がる田園風景にいくつもの〝緑の屏風(びようぶ)〟が姿を見せた。
「築地松(ついじまつ)」と呼ばれる、島根県東部に広がる出雲平野の散居村に特有の屋敷を守る防風林。冬場、日本海から吹き付ける季節風を防ぐため、北西に向かって家を囲むようにクロマツが植えられている。高さ8~12m樹齢は古いもので200年以上になる。
江戸時代、近くを流れる斐伊(ひい)川の度重なる氾濫に備え、屋敷まわりの盛り土を補強するために木を植えたのが始まり。上部は水平に、縦の線は空に向かって広がるように刈られている。「刈り込むことで屋敷に風格を持たせ、不要な日陰をなくし風通しも調整できる」(出雲市建築住宅課)という。
築地松がある家では4年に1回程度、陰手刈り(のうてごり)と呼ばれる職人の剪定(せんてい)が不可欠。維持には困難が多く近年は減少の一途だ。島根県や出雲市などの調査によると、平成24年度に確認された築地松の屋敷は1516戸、クロマツは10731本で、11年度の3380戸、計22501本の半分にも満たなかった。